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dear FUKIAGEHAMASOU – 結び式 –

3月のすえ、ここ南国鹿児島ではこの時期はもう、日照りの中に
身を晒せば真っ赤に日焼けする。
そんな体を引きづりながら、音声収録及び楽曲制作(ダイジェスト編)を
お願いしたタクヤと
大隅から薩摩の西の果てに向け出発し
到着は午前0時を回っていた。

海から吹き続ける風が寝静まった町を走り
轟音だけが鳴り響く。

そして、寒い。

同じ鹿児島でもこんなに気温差があるのかと、
忘れていました。
ここは南九州きっての港町、いちき串木野市。
仕事の依頼は、その いちき串木野市に53年間もの長きに渡り
人々に愛されてきた国民宿舎 吹上浜荘 がこの3月31日をもって閉館、その際にいわば”別れのセレモニー”ということで
「結び式」というイベントが開催される、その1日を映像で残したい、
というものだった。

午前中からオープン、夜には花火が上がる、ということを耳にして
明日は長い一日になることを予測、きっと我々が最後の客になったであろう大浴場で身を休めた。
いつものように明日も、その先もコンコンと沸き続ける気でいる、
日焼けした肌も優しく包み込むここの塩湯に浸かりながら
運命めの決まった、この宿泊施設のことを思う。

轟音に混じるスズメの声で目が覚めた、その足で早速朝日を拝む。
昨夜は気づかなかったが、強風にはためくフラッグがびっしりと
デコレートしてあり、よく見ると
ここの浴衣を再利用したものだった。

元従業員の人たちも続々と”出社”してくる。
久しぶりの再会だったのだろう、館内のあちらこちらで歓声が響く。

エントランスでは
その従業員の方々、地元の神主さんたちによる
手作りの祭壇が出来上がっていく。
笹を目一杯積んだ軽トラック。
その光景が眩しくて眩しくて
日本人由来のピュアな感覚を再認識していく。
(タクヤはここで完全にスイッチ入りました)

建物に対する閉館の鎮めの式というのは
初めて目の当たりにした。

神官の祝詞もどこかやはり優しさが溢れ
お疲れさまでした、という労いの気持ちが
素直にエントランスへと
吸い込まれていくのが良く分かった。

お昼が近づき、風も弱まってきた頃
外で待つ間に随分とおしゃべりをしては
この施設を懐かしんでいた「ファン」たちが
開館のアナウンスと共に、どおっと流れ込んできた。

終始暖かいムードに包まれた素晴らしい
“結び式”の始まりであった。